採用アシスタントの仕事を、AIに。応募が3倍になっても、採用オペレーションは1日約20分
採用AIエージェントOS「フェアパス」bgrass株式会社 代表取締役CEO・CTO 咸 多栄 氏に聞く
応募者への連絡、面接の日程調整、リマインド、選考情報の更新。採用の現場では、応募のあとの実行業務が、担当者の時間を大きく占めています。bgrass株式会社の「フェアパス」は、これを採用アシスタントのかわりにAIが進める、採用AIエージェントOSです。最近は、ツールとしての提供にとどまらず、このOSを基盤にした、人とAIによる支援、採用領域のAX支援、半内製化の支援にも取り組んでいます。ATSの入れ替えは要らず、1か月の無料トライアルがあります。月額5万円〜、導入は約2週間。どんな課題の会社に向いているのか、どこまで任せられて、どこからは人が判断するのかを、代表の咸 多栄氏に聞きました。
この記事でわかること
- ATSとの違い、既存ATS・採用代行との併用のしかた
- 「要対応」だけを見る毎日の使い方と、日程調整・リスケの自動化の範囲
- AIが任される範囲と、人が判断する範囲(合否は人)
- 導入事例の数字と、導入の流れ・料金
- 向いている会社、向いていない場合、連携・提携したい相手
まず、ATS(採用管理システム)とは何が違うのですか
採用の世界には、すでにATSがたくさんあります。フェアパスは、何が違うのでしょうか。
ATSは、応募者の情報を記録して管理する仕組みです。フェアパスは、その情報を見て次に必要な実務を、AIが進めるところが違います。候補者への連絡、面接官の予定の確認、日程調整、リマインド、選考ステータスの更新まで、採用アシスタントが担っていた実行業務です。
既存のATSは入れ替えないといけませんか。
入れ替えは要りません。評価の入力や面接官とのやり取りはATS、候補者とのメールや日程調整はフェアパス、という分担で併用できます。応募や評価の情報は、ATSとフェアパスの間で同期します。APIも公開しているので、お使いのATSの仕様に合わせた同期のカスタマイズもできます。
毎日の使い方:「要対応」だけを見る
実際の画面では、担当者は何を見るのですか。
「要対応」に上がった候補者だけです。媒体ごとに管理画面を開いて、返信や対応漏れを探す必要がありません。AIが候補者の返信や選考の進み具合を見て、対応が必要な人だけを、理由付きで一覧に出します。
担当者の操作は、どんな流れになりますか。
上がってきた候補者を開いて、経緯を確認し、判断と指示を伝えるだけです。「書類は通過で。一次面接の日程調整まで進めて」のように、採用アシスタントに頼んでいた言い方のままで伝わります。するとフェアパスが、面接官の予定と候補日を照合して、予定の登録と案内メールの下書きまで進めます。対応が済んだ候補者は一覧から外れ、返信が来たり、リマインドの時期になったりすると、また上がってきます。
返信がない候補者への催促は、どうなりますか。
「2日間返信がなければ、リマインドしたい」と指示しておくと、日数が経った時点で「要対応」に上がります。毎日、最終連絡日を見回って探す必要がなくなります。「この候補者には3日後に連絡したい」という指示も同じで、指定した日に再び表示されます。
日程調整:配慮ごとAIに任せる
日程調整は、採用担当者の負担が大きい業務です。どこまで任せられますか。
空き枠を出すだけのツールとは違って、人がやっていた日程調整の気配りまで引き受けます。たとえば、面接官の予定が2週間先まで埋まっているときは、差し込めそうな社内の定例などを拾って、「この予定に面接を入れられますか」という面接官への確認メッセージまで作ります。
そのほかにも、日程調整で起きることはありますか。
その日に面接が2件入っていて連続になるときは、「連続になりますが問題ないか」を確認します。面談ごとに30分、45分、60分と所要時間を変えるのも、「45分でAさんと面接調整して」の一言です。リンクを送ったのに候補日が3つ返ってきたときは、「この3つから空いている日で確定して」と言えば、面接官の空きと突き合わせて確定まで進みます。
日程の変更(リスケ)は、やり直しが大変ですよね。
「リスケ対応お願い」の一言で、確定済みのカレンダー予定のキャンセル、必要なら面接官の再アサイン、候補日の再提案、再調整の連絡メールの下書きまで進みます。一から作り直す作業は残りません。面接官を変えたいときや、同席者を追加したいときも、チャットのひとことで組み直せます。
AIはどこまでやり、どこから人が判断するのか
AIが勝手に候補者へ連絡してしまうことはありませんか。
ありません。メールはAIが下書きを作り、担当者が内容を確認して送信します。予定のキャンセルのような操作も、AIが内容を示し、担当者が「実行する」を押してから進みます。確認や送信を、フェアパスのAIサポーターに任せることもできます。
合否の判断もAIが行うのでしょうか。
いいえ。書類や面接の評価と、合否の判断は、導入する会社の担当者が行います。AIは求人の要件と照らして、合致している点と不足している点を整理し、判断の材料として出します。その後の連絡や操作を、AIとAIサポーターが進めます。
AIで進められないことが起きたときは、どうなりますか。
フェアパスのAIサポーターが対応します。AIの出力のチェック、例外やイレギュラーへの対応、候補者へのメールの代理送信などです。この対応の費用は月額に含まれます。
実務で貯まったデータが、次の採用の改善になる
実務をAIが進めると、どんなデータが貯まりますか。
応募、対応、選考の結果や評価、見送りの理由などです。この貯まったデータを「採用改善AI」が分析します。求人ごとに、通過した人と見送りになった人の差を、ハードスキルとソフトスキルの項目として抜き出して採用モデルにします。選考を回すほど更新されて、求人票の見直しやスカウト文面の共通言語になります。
人材紹介会社とのやり取りにも使えると聞きました。
紹介会社ごとの推薦精度レポートを、AIが作ります。選考結果のサマリー、推薦の傾向、見送り理由の内訳、求人票と選考実態のズレ、他のエージェントとの比較、選考の歩留まり、月次の推移、通過者の共通要素の8項目です。「もっと合う人を推薦してほしい」という感覚的な依頼ではなく、実績のデータで返せます。
改善案は、自動で反映されるのですか。
人が確認してから反映します。採用改善AIが作った改善案は、導入する会社の人事担当者と、私たちの支援チームが確認して、会社の方針に合わせて採用要件や運用ルールに反映します。なお、母集団形成については、対象や訴求の改善案を出すところまでです。スカウトの送信や求人媒体の運用そのものは、フェアパスの提供範囲に含みません。
導入事例:SPEED EFFECT
導入した会社では、どんな変化がありましたか。
総合広告代理店のSPEED EFFECTさんでは、採用の管理をスプレッドシートの手入力で行っていて、採用の担当の方が1日に2〜2.5時間を、メールの確認、情報の転記、書類の回収、日程調整に使っていました。導入後は、それが1日約20分になり、中途採用の応募は月50から月150になりました。新卒採用では、専任の担当を置かずに運用できる体制になっています。
※1 導入初期にbgrassが一部のオペレーションを伴走支援した期間を含みます。※2 空いた時間に担当者が母集団形成に取り組んだ結果を含みます。数字は導入前との比較(インタビュー時点)です。
決め手は何だったのでしょうか。
最初は、応募者情報を一元管理できる他社のATSを検討されていました。ただ、見直してみると、負担になっていたのは情報の管理だけではなく、情報を受け取った後の連絡、面接官の予定確認、日程調整、リマインド、評価の回収だったそうです。「管理する仕組み」ではなく、次の工程まで実行して進めてくれるところが決め手になったと聞いています。
使い始めの不安はなかったのでしょうか。
「どこまで指示していいのか、どこまで任せていいのか」という不安は、使い始めて2日ほどでなくなった、と聞いています。評価の項目やフォーマットが揃ったことで、面接官の感覚に頼っていた評価がよりフラットになり、ペルソナの条件に無意識のバイアスがないかにも気づきやすくなったそうです。
導入の流れと料金
導入までの流れを教えてください。
まず、採用のフロー、体制、使っているツールをヒアリングします。次に、組織やコストを踏まえた再設計のプランを出し、人事の領域に詳しいエンジニア(FDE)が、接続、評価の設計、会社ごとのカスタマイズを実装します。ヒアリングから本番運用まで、約2週間が目安です。一つの業務、一つの求人から始められて、既存のATSを残したまま、日程調整だけを任せることもできます。
導入にあたって、会社側で用意するものはありますか。
選考フローの整理(一次面接、二次面接など、各工程で行っている対応)、候補者や人材紹介会社あてに使っているメールのテンプレート、使っている求人媒体の情報、面接官のカレンダーの連携です。
料金は、どのように決まりますか。
「AIの人件費」という考え方です。AIメンバー1人から、月額5万円〜で、ライセンスの一括購入は要りません。応募数などの利用量に応じた従量料金が加わります。AIサポーターによる例外対応やメールの代理送信は、月額に含まれます。1か月の無料トライアルもあり、運用の構築から入らせていただきます。
| 基本料金 | AIメンバー1人から月額5万円〜(ライセンスの一括購入は不要) |
|---|---|
| 従量料金 | 応募数など利用量に応じて加算 |
| 人による対応 | AIサポーターの例外対応・メールの代理送信は月額に含む |
| 無料トライアル | 1か月(運用構築から伴走) |
| 導入期間 | 本番まで約2週間が目安 |
周辺業務の実装や、標準機能にない連携の構築は、内容を伺ったうえで、費用と条件を個別に案内します。
どんな課題を持つ会社に向いているか
どんな会社に、特に合いますか。
主に想定しているのは、月200名以上の応募がある中途採用のチームです。そのほか、スプレッドシートで採用を管理している会社、ほぼ一人で採用を回している会社、応募はあるのに採用担当がほかの仕事と兼務で、改善に手が回らないベンチャー企業にも合います。いまの採用アシスタントを増やすか、採用代行の委託範囲を見直すか、と考えている段階でも相談いただけます。
こんな課題があるなら、フェアパスの対象です
- 応募後の連絡、日程調整、リマインドに、1日2時間前後を使っている
- 媒体ごとに連絡が分かれていて、返信や対応漏れの確認だけで時間がかかる
- スプレッドシートの手入力で、連絡や更新の漏れが起きている
- 採用アシスタントや採用代行に頼んでいる実務を、AIに移せないか考えている
- 人材紹介会社に、感覚ではなくデータでフィードバックしたい
- 面接官ごとに評価のばらつきがあり、基準を揃えたい
逆に、向いていないのはどんな場合ですか。
月50応募に満たない場合は、効果が出にくいことが多いので、その点も含めてお話しします。また、スカウトの送信や求人媒体の運用そのものはフェアパスの範囲外で、母集団形成に関しては、改善案の提案までです。合否の判断は人が行います。
採用代行(RPO)を使っている場合は、どうなりますか。
いまの契約はそのままに、一部の実行業務から並走できます。成果を見ながら、AIに移す業務と外注に残す業務を整理して、任せる範囲を広げていけます。AIが実務を進め、人が判断と伴走を担う形です。
連携・提携したい相手
どんな相手との連携や提携を考えていますか。
3つあります。1つ目は、お使いのATSや求人媒体、カレンダー、チャットなどとのシステム連携です。連携の方法は、直接連携やメール経由など、お使いのサービスに合わせて個社ごとに構築します。2つ目は、RPOや人材紹介、人事コンサルティングなどの採用支援の会社との協業です。私たちは「AIネイティブ採用研究所」を2026年8月に設立していて、共同研究のパートナーも募集しています。3つ目は、自社の採用にAIを取り入れたい事業会社との、実際の現場での導入と検証です。
採用以外の領域は、考えていますか。
採用の領域で磨いた仕組みを、営業、カスタマーサクセス、バックオフィスなどの領域へ広げていく構想です。人事の現場に入るエンジニアの知見を、プロダクトに戻していく循環をつくっていきます。
なぜ、この事業を始めたのか
創業のきっかけを教えてください。
出発点は、私が個人で作った、女性エンジニア向けのメンターマッチング「sister」です。ユーザーと話すうちに、自分が解決したい課題に気づきました。格差は経済の仕組みの中で解決すべきだと考えて、約3か月悩んで、株式会社にする決断をしました。会社は2022年7月に作っています。
そこから、採用のAIにつながったのはなぜですか。
女性エンジニアの転職を支援するなかで、企業の側に、選考に潜む無意識のバイアスで優秀な人を採り逃している、という課題が見えてきました。ミッションは「『なりたい』を解放する」です。公平な評価を、善意や気配りに頼らず、仕組みで当たり前にするために、フェアパスをつくりました。採用公平性のスコア、属性別の通過率の監視、面接官ごとの傾向の可視化も、標準で備えています。
立ち上げのころは、大変だったのではないですか。
資金も売上もゼロで、最初は約10人いたプロボノのメンバーを、コミットできる3人のコアメンバーに絞りました。事業の方向性も、約3回ピボットしています。いちばん大変だったのは、チーム作りでした。2025年8月には、NEXTBLUE、WPower Fund、サイバーエージェント・キャピタルなどから、総額1.25億円を調達しました。
最後に、導入を考えている会社へ
これからフェアパスを検討する会社に、ひとこと、お願いします。
いまは何とか回っていても、応募や採用人数が増えると、どこかで対応漏れやリソース不足が起きます。「本当は、もっとやれることがあるかもしれない」と感じているなら、まずは資料を見て、業務の棚卸しから相談してください。1か月の無料トライアルで、どの工程から任せられるかを、実際の業務で確かめられます。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
- 設立: 2022年7月
- 所在地: 東京都渋谷区
- 事業: 採用AIエージェント事業(フェアパス)、IT・AI人材転職支援事業(WAKE Career)
- 会社サイト: https://bgrass.co.jp/
- フェアパス: http://lp.fair-path.jp/